データは増え、ツールは進化し、生成AIまで手に入った。それでも「結局、何を決めればいいのか」が出てこない。原因はスキルではありません。順番です。
本書が提案するのは、まず仮説を立て、その白黒をつけるために必要なデータだけを見るという、順番の逆転です。たったこれだけで、分析は「作業」から「判断」に変わります。
- 順番をひっくり返す
- 反証できる文に書き直す
- 確かめられるのはつながっている区間だけ
- 答えは自社の中にしかない
- 毎週見ている数字を一つ捨てる
この会議、見覚えがありませんか
- 週次の営業会議。ダッシュボードの数字は全員見ているのに、会議は「持ち帰って再分析」で終わる。翌週も同じ画面を見て、同じ結論になる。
- 経営層に「DXでデータドリブンに」と言われ、集められるデータは全部集めた。集め終えたところで、何を判断するためのデータだったのか誰も答えられない。
- 生成AIに売上データを渡して「分析して」と頼んだら、もっともらしい要約が返ってきた。きれいだが、明日の自分の行動は何も変わらなかった。
この本が言っているのは、これだけです
分析のための分析
分析の範囲は仮説が決める
本を買わなくても、今日できること
- 1
第1章「今日の午後に、一度だけ聞いてみる」
次に分析を頼まれたとき、一度だけこう聞く。「この分析は、何を決めるためのものですか」。一件につき一度だけ。答えが返る依頼と返らない依頼が、その場で分かれる。
- 2
第2章「課題を一文で書き直す」
手元の課題を一文で書き、主語を観測できるものへ、動詞を測れる変化へ、比べる相手と時点を一つ入れて書き直す。夜に一度だけ読み返し「外れていたら、どの数字で分かるか」に答えられれば合格。
- 3
第3章「数字を一つ消す」
毎週見ている数字を紙に書き出し、「動いたとき誰が何をするか」に答えられない行を一つ、今週の定例から外す。誰も気づかなければ、それがその数字の値打ち。
冒頭を読んでみてください
プロローグ:その分析は、何を決めるためのものですか
「このデータ分析、本当に必要なのでしょうか」
会議室でそう口にした瞬間、場の空気が固くなった。そんな経験をお持ちの方は、少なくないと思います。
たとえば、こういう場面です。新規事業の可否を判断するために、市場調査に三ヶ月をかけた。データは十分に集まり、資料も分厚くなった。ところが結論を出す頃には、競合がすでに同じ市場に商品を出していた。分析そのものは丁寧だったのに、決めるのが間に合わなかった。
作例とはいえ、心当たりのある方は多いはずです。データ分析に時間がかかり、判断が出る頃には状況が変わっている。あるいは、立派な分析報告書が回ってきたものの、では明日から何をするのかがどこにも書かれていない。こうした声は、業種を問わず耳にします。
そこで本書が提案するのが、「データ仮説思考」という進め方です。ねらいはひとつ。あなたが日々の仕事で積み上げてきた経験と勘を、生成AIという新しい道具と組み合わせて、速く、しかも外しにくい判断に変えることです。
仮説から入る仕事の進め方そのものは、以前からあります。本書がそこに足しているのは、三点です。第一に、捨てる条件を先に書くこと。第二に、見るデータを有限化すること。第三に、生成AIを死角の指摘と下書きに限って組み込むこと。この三点が、本書の言う「データ仮説思考」の中身です。
本書に登場する企業名・人物・数値は、すべて作例です。実在のものではありません。
本書のポイントを一部抜粋(図3点)
仮説を立てる七つの工程
- 工程1 課題を、誤解の余地なく言葉にする
- 工程2 現場から、可能性を吸い上げる
- 工程3 生成AIで、視野の外を埋める
- 工程4 候補を、構造として並べる
- 工程5 順番をつける
- 工程6 検証を設計する
- 工程7 走らせて、走りながら直す
全体を三週間と見込んで組んだプロセス
先行指標と遅行指標の因果連鎖
確かめられるのは、つながっている区間だけ
一枚の統合ワークシート
- 1何を決めるのか
- 2いつまでに決めるのか
- 3いま分かっている現状(症状ではなく状況で)
- 4仮説(観測できる主語・測れる動詞)
- 5この結果が出たら、この仮説を捨てる
- 6そのために必要なデータ(見ないものは書かない)
- 7誰が、いつまでに集めるのか
- 8数字が動いたら、誰が何をするのか
- 9そのために要る承認・予算・人
埋まらない行が出たら、そこが今日の本当の課題です
何が書いてあるか
第1章 データ仮説思考の基本概念
データを集めてから考える順番を逆転させ、捨てる条件を先に書く・見るデータを有限化する・生成AIは死角の指摘と下書きに限る、という本書の枠組みを定義する章。
- プロローグ:その分析は、何を決めるためのものですか
- 1. データ仮説思考という進め方
- 2. いま、この進め方が必要になった理由
- 3. 実践の型:データ仮説のSTAR法
- 4. 生成AIをどう組み込むか
- 5. 組織に根づかせる
- エピローグ:地図と、歩き方
- 章末演習:手を動かしてみる/まとめ
第2章 仮説を立てる技術 〜問題解決の質を決める「最初の一手」〜
「品質意識が低い」のような確かめようのない文を、観測できる主語と測れる動詞に書き直す七つの工程を、製造業の一週間の作例で通しで見せる章。
- 分析疲れという症状
- 1. 同じ問題への、二つの入り方
- 2. 仮説は、因果の連鎖として書く
- 3. 仮説を立てる、七つの工程
- 4. 一週間が明らかにした構造
- 5. この進め方を、部門の外へ
- 6. この作例が残したもの
- 第2章の骨だけを残すなら
第3章 データ収集とAIによる効率化
「答えは自社の中にしかない」を軸に、目的から逆算して集めるデータを名指しし、生成AIで収集を軽くし、小さく試して前提の変化に耐える章。
- データの海で溺れないために
- 1. 目的から始めるということ
- 2. 答えは、自社の中にしかない
- 3. 実際に、何を集めるのか
- 4. 小さく試す
- 5. 前提が変わったとき
- 6. 三ヶ月後に見えたもの
- 7. 明日から、何をするか
- この章で決めたこと
巻末 一枚の統合ワークシート
何を決めるのかから承認・予算・人まで、仮説から行動までを九行で一枚にまとめて回すワークシート。埋まらない行が今日の本当の課題。
本書で身につくこと
- 反証からの設計
- 捨てる条件を先に書く。外れた仮説が資産になります。
- 見るデータを有限にする技術
- 「網羅」をやめても怖くなくなります。
- 先行指標と遅行指標の因果連鎖
- 確かめられる区間だけで語ります。
- 生成AIを実務で使う型
- ChatGPT・Claude・Gemini を「死角の指摘」と「下書き」に使います。
- 今日の一手
- 会議で今日から使える具体策が、各章末に1つずつ。
誰のために書かれた本か
データの専門家ではない管理職・営業企画・DX推進の方が、そのまま自分の現場に置き換えられるように書いています。
- 読み終えたときに手元に残るのは、巻末の「統合ワークシート」一枚。仮説から行動までを、これだけで回せます。
- 作例はEC・製造・小売・営業。自分の業界に近いものが、どこかで必ず出てきます。
- 3ページに1つ図があるので、読みながら手を動かせます(全46点)。
著者
渡部孝義。日系企業・外資系企業の第一線で三十年、営業改革とデータ活用の現場に立つ。SFA/CRM導入、営業組織のデータ活用定着、企業研修・アドバイザリーに従事。


